丹沢コレクション選 アンティークジュエリー
ごあいさつ
京の都より、水晶の生産地である甲州に、研磨の技術がもたらされたのは、およそ200年あまり前のことだといわれています。その後、脈々と受け継がれた水晶貴石彫刻・研磨の伝統技術は、錺職の伝統とも相まって、戦後迎えたジュエリー産業創成期に大きな役割を果たしました。そして、いまや日本におけるジュエリー製作の中心地となった山梨の地で、丹沢アンティークジュエリーコレクションの美術館を開館することができたのは、多くの方々のご協力のお陰だと深謝する次第です。
私がアンティークジュエリーのコレクションを始めたきっかけは、30数年前、ロンドンの骨董街で、半貴石を使ったマーカサイトやスコティッシュジュエリーと出会ったことでした。石使いの面白さ、時を経たジュエリーが醸し出す雰囲気、さまざまな時代ごとに変遷するファッションとジュエリーとの感性の響きあいに、魅了されてしまったのです。
それからというもの、アメリカやヨーロッパに旅行するたびに、骨董街を歩いて少しずつ収集したり、フランスの知人に頼んで、アール・ヌーヴォーのジュエリーを選りすぐってもらったりと、こつこつと収集を続けました。こうして積み重ねた成果が、300点におよぶ当館収蔵品です。これらを通じて、ご来館者の皆様に、アンティークジュエリーの歴史・文化・技法などの楽しさなどを、お楽しみいただければ幸いです。
小さな蔵の美術館
館長 丹沢良治